武田ゼミ18期、韓国へ行く。〜GFSで得る学び〜

ゼミ活動

アニョハセヨ〜。経済学部 武田ゼミ18期の桐原です。 経済学部には、ゼミと連携したグローバル教育「グローカル・フィールド・スタディーズ(GFS)」があります。武田ゼミでは2年次にこのプログラムを利用し、毎年9月上旬に韓国で釜山教育大学の学生たちと交流を行う海外研修を行っています。

グローカル・フィールド・スタディーズ(GFS)とは
ゼミによる国内および海外における実態調査・研修活動をさらに充実・発展させるためのプログラム。世界で起こっている様々な経済問題を解決するために、現場で考え、現場で行動することができる人材が求められている中、経済学部の多くのゼミが、活動の一環として国内・海外問わず実地調査に赴き、研究活動を行っています。

18期のGFSも、準備期間を含めて6ヶ月に及ぶ、大きなプロジェクトでした。二年生になってからほとんどが初めて出会う友人たちと、釜山教育大学の学生に向けたプレゼンの準備、渡航の準備を行う中で、沢山の学びを得ることができました。渡韓した後も、初めての海外の人も多い中で(私もその一人です)、戸惑うことも多い一週間でしたが、密度の濃い充実した経験を積むことができました。 そんな武田ゼミのGFSで得られた学びをいくつか、紹介できればいいなと思います。

武田ゼミ、出会いと始まり。

武田ゼミの始まりは、「一年生の春休み中に2回、全員で遊びに行くように」という武田先生からの「課題」からのスタートでした。大半の友人とは、そこで初めて顔を合わせました。

武田ゼミのGFSでは文化班、学校班、経済班の3班に分かれ、韓国の学生に、夏休みに発表するプレゼンの準備を行います。文化班に入った私は、「日本には文化が沢山あるし、そんなに難しいことはなさそう」と思っていました。しかし班員たちと意見を合わせていく過程で、多くの困難に直面しました。姿形がない「日本文化」。その中で何を韓国の学生に伝えれば良いのか、5人の班員それぞれが違う意見を主張しながら、プレゼンという一つの作品を作り上げていかなければいけません。昼から会議を始めたのにもう夜?今すべきことは内容を増やすことなの?それとも一旦最後まで作っちゃうべき?議論が深まれば深まるほど、ゴールが想像できなくなっていくような日々でした。当時のメモを見返すと、そんな班活動のことを思い出します。

緊張の中間報告会!そしてまた、修正の日々。

武田ゼミでは、2年生がプレゼンの途中経過を発表し、先生や先輩方から質問や指摘を受ける中間報告会があります。そこでは、内容全体の疑問から英語の表現、スライドの色使いまで、一つ一つ丁寧に指摘、質問をいただきました。

自分たちの中では十分煮詰めて準備したはずなのに、同じ経験をした先輩方からの意見の鋭さは別格でした。例えば、武田ゼミでは一つのスライドにはなるべく一つの情報を載せるべきであると教えられます(「ワンスライドワンメッセージ」)。しかし、その原則に固執するあまり、さまざまなスライドがバラバラに配置され、聞き手が分かりにくくなってしまっていました。先輩方は「そういう時は、あえて概要を一枚のスライドにまとめてみては?」など、原則にとらわれず、どのようにすれば伝えたいことが正しく伝わるかということを意識した提案をしていただきました。

発表前も、その後の指摘の時間も、何を言われるんだろう??とずっと緊張していましたが、頂いた指摘はどれも的をいた適切なものでした。山ほど上がってくる改善点を抱えて、中間報告会以外でも、メンターの先輩方に質問して(武田ゼミには先輩が後輩を教えるメンター制度があります)、リサーチし直して、修正点をみんなで話し合って…。ゼミならではの、一人では決してできない学びを深める機会だと思って、必死に食らいつきました。そんな壮絶な中間報告会を6月下旬、8月上旬、8月下旬の3回繰り返し、少しずつプレゼンの精度を高めていきました。

夏合宿とプレゼンの完成!

最終的に、文化班は「お雑煮」、経済班は「最低賃金」、学校班は「部活動」についてのプレゼンを完成させました。3班共に班のカラーが色濃く出た、そして4月の始まりの時には誰も想像もできなかったような、工夫が満載の作品になりました。文化班はスライドに自作の料理動画を盛り込みました。経済班はそのロジックについて、学校班はそれぞれの部活動の経験を活かしたスライドでした。春から始めて、多くの時間を準備に充てた班活動の中で、紆余曲折ありながらも、渡韓の準備は整っていきました。

渡韓前の夏合宿で、全班準備を終えました!

いざ韓国へ。沢山のお肉たちとご対面!

朝9時の成田発の飛行機にのって、韓国へと飛び立ちました。ハイテクな入国審査(指紋認証されるだけで終わりました)を終えて、初日の夜からいきなり釜山教育大学の何人かの学生さんたちとの晩ごはんへ。カルビとサムギョプサルを食べながら、カタコトの英語でなんとか会話を広げようとみんなで頑張りました。韓国の学生の皆さんは英語もさることながら、日本語を話せる人も沢山いることに驚かされました。「自分たちは韓国語が全然分からないのに、韓国の学生は日本語まで勉強していてすごい(ゼミ生)」と、勉強熱心な韓国の学生の皆さんに圧倒されながらも、少しずつ知っている単語と短い文章を組み合わせて、お互いの国の生活について話ました。

いよいよ発表!言葉の壁への挑戦。

そして、この韓国研修のメインイベントである、釜山教育大学での交流会の日がやってきました。両国の学生の発表と質疑応答の時間。言葉の大切さについては、そこでも強く感じました。相手が言いたいことを聞き取って、自分たちが知っている言葉で返す。当たり前のコミュニケーションが、異国の地では当たり前ではない。そのために、相槌や目線や身振り手振りをフルに使う。「本音を伝えたい」という気持ちを全面に出す。頭では分かっていても、実際に体験してみるのとみないのとでは、全然違うということを体感しました。それでもやっぱり、自分たちが言いたいことが伝わると嬉しい!2日目にして圧倒され、ゼミ生各々色々な感想を持った交流会でした。ちなみに、お土産に持って行ったチュー王子は、韓国の学生の皆さんにも可愛がられていました。笑

博物館でのフィールドワーク。その歴史の混沌。

3日目以降の博物館でのフィールドワークは、日韓での違った歴史の視点を目の当たりにすることになりました。今回は、釜山近現代歴史館、朝鮮通信使歴史館、大韓民国歴史博物館、西大門刑務所歴史館、安重根義士記念館など、さまざまな歴史館に足を運びました。近代以降、日本は海外に領土を広げ、韓国は植民地政策を行われた立場になります。韓国では、「日本からの独立のために努力した」という視点で展示物が並べられていました。日本で勉強しているだけでは想像もつかないような資料を前に、自分の知っている知識と照らし合わせながら、慎重にフィールドワークを進めました。

最も印象的だったのは、言語によって異なる表現の違いなど、言葉の細部にまで気配りが必要なのだということです。韓国の博物館では、史実についての解説が英語、日本語、韓国語で表記されているところが多く、それぞれ日本の教科書とは異なる表現が使われていました。例えば、「日本」は単なるJapanではなく、Imperial Japanなどといった表現が使われており、「日本帝国主義」「日帝」などと訳されていました。現代の日本人が想像しがちな「日本」とは違う、当時の「韓国人」からみた日本を想起させる表現も多く使われ、大きな歴史の重みを感じることができました。

景福宮。いい天気、でも暑かった!

言葉を超えた先にあるキモチ。

対照的に、4日目のソウルでの学生交流の場では、和気藹々と交流を深めることができました。ここでは日本語を学んでいる韓国の学生さんとの交流だったので、話題も日常的なものでした。やはり食べ物やアイドルや恋バナは万国共通なのかもしれません。お互い知らない言葉を教えあったり、それぞれの国でおすすめのお店を紹介しあったり。 現地の学生と生の交流を深めると、誰とでも分かり合えるような気がしてきます(少なくともそんな気持ちになります)。最初は、自分が相手のことを知らずに緊張したり不安になったりしても、一歩踏み出して楽しい経験になってしまえば、それはまた次の交流の一歩に繋がっていくのではないかな、と感じました。

いかがでしたか?GFS。

初回の授業で、今回のGFSは、「当たり前を疑う」ことが目標だと武田先生がおっしゃっていました。それは韓国にいくのだから、日本の当たり前と韓国の当たり前が違うことを実体験することだと思っていました。実際に韓国では、言葉や歴史の重みについて日本にいるだけでは学ぶことの出来ない経験をすることになりました。

ところが、グループワークを重ねる中で、同じ日本人であるゼミ生同士でも、自分の当たり前が通用しないことが多々ありました。性格も経験も異なる人が集まる時、それは必然かも知れません。日本人、韓国人に関係なく、自分の中の「当たり前」が通用しなくなることはこれからも沢山あると思います。それでも、分からないことから目を逸らしたり、決めつけたりするのではなく、まずは相手を理解しようとする姿勢を忘れてはいけないのだと思います。そんな当たり前のことを、身に染みて再確認させられました。

学生同士、楽しみながら交流できる機会を設けていただけたことに感謝の気持ちを忘れずに、そして自分が知らないことに素直に向き合いながら、今後もゼミの活動を頑張っていこうと思えるGFSでした。

最後に、今回のGFSに関わって下さったみなさんに感謝申し上げます。温かく迎え入れて下さった、釜山教育大学の金龍民先生と、時事日本研究所長の崔仁漢先生、時事日本語学院副院長の三上将宏さん、そして韓国の学生の皆さん。補助金申請をはじめとしてお手伝いいただいた経済学部事務室の皆さん。渡航の準備を進めてくださった、中大生協の芦田忠之さん。沢山のご指導をいただいた先輩方、準備を進めてくれた幹部と同期のみんな。なにより、貴重な経験の機会を与えて下さった武田先生。本当にありがとうございました。

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