“後になってからしかわからないことがある“。「分かる講義」が評判の、益永先生による人生訓。

中大経済の先生

今回、経済学史がご専門の益永淳先生にインタビューさせていただきました。この道に進んだ理由や、「丁寧でわかりやすい」と評判の授業について、その工夫などをお伺いしました。

様々な学問分野があるなかで、経済学に興味を持ったきっかけは何だったのですか?

実は大学受験の際、特に経済学部に行きたいわけではなかったんです。高校生のとき、文系であることは確かだったのですが、就職活動などを考えて、法学部や経済学部、社会学部を受験して、最終的に合格した経済学部に進学したというだけにすぎませんでした。そのため、入学後も経済学や経済の授業に対して面白いと思ったことはなく、ほかの一般教養の授業のほうが学んでいて楽しいと感じていました。

後に経済学の教授になる人でも大学のときはそんな感じなんですね。なんだかちょっと、安心します笑。転機はいつだったのでしょう?

大学4年生で履修した経済学史という授業が私にとっての転機だったと思います。ミクロ経済やマクロ経済、マルクス経済学以前に経済学がどのような時代背景や、どのような当時の問題を解決するために形成されてきたのかを学びました。このとき初めて経済学というものが、「現実を写し取り、反映して描き出した体系」であることに気づき、現在の経済というよりは18世紀、19世紀など当時のイギリス経済学の現実の問題がいかに経済学に影響を与えていたのか、という点が興味を持つきっかけだったと考えています。

「大学4年生まで、これといって経済学に興味がなかった」という益永先生

私が大学1年生で益永先生の授業を受講したとき、講義がとても丁寧で学生への配慮がすごいと感じたのですが、先生にとってのポリシーなどはありますか?

「講義」を行う場合と「ゼミ」を行う場合で2つ分けて考えています。
まず、講義の面に関しては“分かることと面白い(と感じる)ことの間には高い相関性がある“ ということを意識しています。私自身、面白いことを言って誰かを笑わせたり、そのような引き出しを持っていたりするわけではありません。そのかわり、自分が行う講義内容について、初めて聞く人にも論理的に分かりやすく説明をすれば面白いと感じてもらえることは多いように思っています。なので、面白い講義をするためには、身近な具体例を使ったり難しい言葉を言い換えたりして、「分かる講義」をしなければいけないというふうに思っています。

「言い換え」や「具体例」で分かりやすくなったこと、確かにありました。「ゼミ」はどうでしょう?

ゼミに関しては、“正解が見えない状況の中で徹底的に試行錯誤してもらう“ ようにしています。
高校までの基礎を養うために既存の知識を吸収することに重点を置かれた勉強とは違い、大学では、既存の知識を自分たちで組み合わせたり活用したりして、今まであまり指摘されてこなかった部分に焦点を当てることが大事になってきます。こうした今までに経験のないことを行うのはとても難しいことです。

ですから、秋のプレゼン大会でグループの研究発表をすることが決まっている学生のみなさんは、その研究過程において行き詰まることが出てきて当たり前だと思います。やり方や結論の持っていき方をなんとなく教わることが多かった高校生時代とは異なり、テーマやテーマの考察、その論証プロセスも全てグループ次第となる大学のゼミでは何を拠り所にしたらよいか不安な状態なのではないでしょうか。

そうですね。「正解」が見えない不安はありました。

しかし、今後社会に出たあとには、これまでのやり方を十分に吸収した上で、それになにか自分なりの+αをすることが求められていくでしょう。そのため、先行研究をしっかりと整理して、それとの違いを出していくという正解の見えない試行錯誤を大学生時代に行うことは、社会人になってからの考え方や伸び方に繋がっていくと考えています。

ゼミは社会に出たときの、まさに「練習」なんですね。
ところで先生は中央大学以外にも多くの大学で教鞭を執っておられましたが、他と比べて中央大学の学生の印象はどうですか?

真面目であり、堅実であり、謙虚であるという印象です。今挙げたこの3つは、学生としても社会人としても、誰かから評価される際のベースになる部分だと思います。中央大学の学生は全体として見る限り、社会に出ても周りから信頼と評価に繋がる人材に育つのだろうと考えています。

しかしその一方で、これらの要素は日頃からの地道な努力が必要ですが、これが自分の望む結果に至らなかった場合、日々努力を行っていたからこそ必要以上にガッカリして自信や意欲を失ってしまう学生が多いようにも見えます。

「中大生は真面目であり、堅実であり、謙虚」という印象だそうです

ただ、人生全てで第1希望が通ってきたような人は少なく、大抵の人は挫折を経験していると思います。その希望したわけではない道を歩んでいて出会った人やそうした人達との経験によって気づくこともあるので、“後になってからしかわからないことがある“ということを頭の片隅に置いて今を楽しんでほしいです。

最後に益永先生が思う“中央大学経済学部の魅力”を教えてください

それは“入学後に気づく魅力が多いこと“ が魅力なのかなと思っています。経済学部という特性上かもしれませんが、中央大学の経済学部に入ってくるとき、高校時代から自分のやりたいこと、やりたい勉強、将来就きたい職業などがすでに明確なものとして持っている学生の方は少ないはずです。

そうですね、確かに高校生の頃は「経済ってなに?お金?」っていう状態でした。

そんな中で中央大学の経済学部は、ゼミだけでも50以上のテーマを取り扱う様々なゼミがありますし、キャリアの面でも幅広い派遣先のインターンシッププログラムも行っています。留学や国外調査に関しても、多くの国に行くチャンスも設けられています。

講義については、理論や歴史、政策、制度、実態などの側面から勉強できるようになっているので、半期に1つや2つくらいは受講していて自分の興味関心に触れるものがあるのではないかと思います。大学の教育は専門性の高いものなので、興味関心が湧き、授業を聞いた後に参考文献を自ら読んでみようという気持ちなどが出てきたら、授業としては大当たりになると思います。

今の社会は早いうちから自分の得意不得意を見極めて、得意を最大限に発揮できるような将来の道を考えなければいけないというようなプレッシャーが強すぎるような気がします。現実はそう上手くいくわけではなく、私個人の人生や私が出会う多くの学生を振り返っても、最初から自分の可能性を見られているということはないと感じます。自分の可能性を性急に決めつけず、時間をかけて少しずつ見出していくしかないと割り切ることが大事だと思います。

そこへいくと、入学してから、どのような興味関心を持っていたとしても、それらの伸びる方向に何かしら活用出来るような制度や活動が用意されている、という点は中央大学経済学部の魅力と言えるのではないでしょうか。

ありがとうございました!

編集後記

今回、初めての取材ということで私自身が所属しているゼミの益永先生にお話を伺いました。普段の授業では決してお聞きする機会がないような先生の学生時代のお話や、授業の軸となるような考え方を知ることができ、今まで以上に大学教授に対する親しみが湧いたと感じています。(学生記者:鈴木)

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