コロナに妨げられても。目標を変え、力強く挑戦を重ねる経済学部生の話。

学生と卒業生

今回は、経済学科の在学生である岡田逸希さんにお話を伺いました。

岡田さんは昨年、株式会社マイナビMY FUTURE CAMPUS運営事務局が主催する企画アイデアコンテスト「課題解決プロジェクト Season1 <テーマ提供企業:グーグル合同会社>」に参加し、350チーム中の上位10チームへの入選を果たしました。 コンテスト参加に至った経緯や当時の苦労、振り返ってみて思うことなどをお話していただきました。

2020年前期、コロナ禍で留学の予定がなくなった

―岡田さんはいま3年生ですが、これまでどんな学生生活を送っていましたか。

将来について「国際的に活躍するビジネスマンになる」という漠然としたイメージがあったので、入学当初から、留学することを目標に準備を始めました。
1年生の冬に、2年次後期から1年間アメリカの大学へ留学することが内定したので、それからは経済学部の学生国際交流委員会の先輩たちに留学に関する話を聞いたり、人生初の海外一人旅をしたりして過ごしていましたね。そうしたら、新型コロナウイルスの感染拡大が始まってしまいました。

―新型コロナウイルスの影響で、学生生活が大きく変わったのではないかと思いますが、どうでしたか。

2年生の8月(2020年8月)から留学する予定でした。当時はコロナの影響がこんなに長く続くと思っていなかったので、予定通り出発するつもりで英語の勉強を続けながら、オンラインで大学の授業を受けていました。
ただ、出発時期が近付くにつれて「いま(コロナが収まらない状況で)行ってもしょうがないな」と思うようになって、6月の終わりに出発をいったん延期することにしました。

―留学という目標の実現が難しくなって、残念な気持ちが大きかったのではないかと思います。

残念でしたね。就職活動のことを考えると、やはり2年後期から1年間留学するのがベストと考えていたので、出発できなくなったことでこれまでのプランが壊れてしまったなと。
そのちょうど留学に行くか行かないかの判断を迫られている時期に、Google社が課題を提供している企画アイデアコンテストを見つけました。

新たな目標として企画アイデアコンテストへの挑戦を決める

―参加を決めたのはどんな理由からですか?

外出自粛期間中で時間があるからこそできることをしたい、という思いがあったし、僕は元々、ちょっとでもやりたいなと思ったことは深く考えずにまずやってみるタイプなんです。自分が興味あることには、周りの人にも声をかけて一緒にやってみたり、逆に誘われたものに対しても嫌じゃなければまず参加してみよう、という性格です。
なので、友人二人とチームを組んで、このコンテストに挑戦してみようと思いました。

―他大学の友人と一緒にチームを組んだと聞いていますが。

そうですね、二人とも中学時代からの友人です。いつも一緒にいてワイワイ騒ぐ友人、というよりは、それぞれ行動力があってやりたいことをやっていて、お互いにリスペクトしている人。「竹馬の友」からチーム名は「Bamboo Horse」にしました。

―コンテスト参加にあたって、難しかった点はありますか。

このコンテストのテーマは「AIで解決する社会問題」なのですが、そもそもAIの知識が全く無くて。本を読んで知識を得るところからスタートしましたが、日々進歩している分野なので、情報をどんどんアップデートしなければならず、大変でした。

それと、僕たちはそれぞれ通っている大学も住んでいる地域も違うので、取り組み始めてから終わるまでの約3か月間、一度も会わずに作業を進めました。やりとりはすべてオンラインで、画面共有などを駆使。
他の応募チームは、同じ大学の仲間同士やゼミ単位でチームを組んでいるようだったので、そういったチームと比較すると、直接会えないし、指導してくれる教員もいないし、人数も3人しかいないからそれぞれの負担が大きいし、難しい点は多かったと思います。

―難しい点が多い中、3人でどんなふうにプロジェクトを進めたのですか。

それぞれのチームが「課題に対してAIを駆使した解決策を提示する」というのがこのコンテストの主旨なのですが、社会問題って食品ロス、配達ドライバーの負担増大、高齢者の運転事故とか…本当にいろいろありますよね。
その中で、すでに解決策が提示されている課題を選んでしまったらこのコンテストの主旨に合わないと思ったので、まったく新しい解決策を提示できるテーマを選ぶようにしました。

そこでまず、思いつく限りの社会問題と、「こうしたら解決するんじゃない?」という案を3人で出し合って、すでに一般的な解決策が提示されているものなのかを片っ端から調べました。その結果、僕たちは「日本の政治参加意欲の低下」に着目することにしたんです。

過去の入選アイデアも一通り目を通すなど、入念な下調べがすごい!テーマ選定から勝負が始まっているんですね。

岡田さんらのチームによる提案

―コンテストで提案した内容について詳しく教えてください。

日本では現状、約半数の国民が政治的主張のもっとも有効な手段である投票権を放棄しています。ただ、投票をしていない人たちも政治に興味がないわけではなく、「自分の政治的関心がどこにあるのかわからない」から、どの政党に・誰に投票して良いかわからない。だから選挙に参加しないんです。
そこで僕たちが提案したのは、人々の政治的関心を可視化する仕組みをつくり、投票行動への橋渡しをしよう、というものです。

投票率が特に低いのは、20~50代の働く世代。しかしながら働く世代はスマートフォンの保有率が60代以降の世代に比べて高く、かつスマホでニュースをチェックすることが習慣化されています。
ニュースの閲覧記事には個人の趣味趣向が現れやすいので、その人が閲覧したニュースの記事をAIで読み取り、その記事がどんな政治トピックに関係があるのか提示する仕組みを作ります。

プレゼン資料(スライド)の一部。着眼点が高評価。

「あなたがいま読んでいる農業の記事は、少子高齢化やTPPに関連していますよ」というサジェスチョンがあれば、自分の関心がどこにあるのかがわかりやすくなりますよね。
また、自身のこれまでの閲覧記事から関心のある政治トピックをランク付けし、自分が重視しているトピックが何なのかわかるようにします。自分の政治的関心やその優先順位がわかれば、自分の考えと近い政党・議員とのマッチングを行うWebサイトはすでにあるので、そういったサイトへ誘導し、投票する際の参考にすることができます。

このように「選挙ってどこか他人事と思っていたけれど、自分が普段読んでいるニュース記事とこんなつながりがあるんだ」ということを可視化することで投票率を向上させる試みを提案しました。既存のニュースアプリとのAPI連携や、Google社の文字認識ソフトなどについては本を読んで学び、提案を作り上げました。

―自分たちで課題を設定して、仮説を立て、実証する、というプロセスを経験していなければ、ここまでのものは作れなかったと思いますが、これまでにそういった経験はありましたか。

そういう経験があまりなかったので、トライ&エラーの連続でした。取り組み始めて最初の数十時間は、まったく別のテーマを調べていたくらいです。なので、決して最初から順序立てて進められたわけではなく、とにかく走って、壁に当たった時点で軌道修正する、ということを繰り返しました。そこは本当に苦労しましたね。
でも、昔からよく知っていて、お互いを尊敬している3人だったからこそ、意見を遠慮なく言い合うことができたし、その分軌道修正もうまくいって、最終的にまとまりやすかったのではないかと思います。

―結果は、応募総数350チーム中、上位10チームに入賞。振り返ってみていかがですか。

やってよかったとしか言いようがないです。結果が良かったのももちろんですが、大学の授業と両立しながら、最後まで頑張れた、その過程が何より大きな自信になりました。今後自分が何か新しいことに挑戦したいと思った時に、「あの時あれができたんだからこれもできるはず」という力になると思います。

このコンテストの後に、まったく知識のないところから簿記2級取得にチャレンジしたのですが、「あの時に比べたらきつくないな」と思って勉強し、無事合格できました。こういった成功体験の積み重ねが大事だと思っています。

今後の大学生活と将来のこと

―将来の夢、今後の目標などはありますか。

現段階でこれと決まったものはないですが、ワーク・ライフバランスや収入を含めて「自分の理想とするライフスタイル」というのがあって、それを実現できるような仕事を選びたいと思っています。

職業ありきではなく、ライフスタイルありきで将来を考えているんですね! 阿部先生のキャリアのお話に通じるものがあるな、と思いました。

現時点でいくつか良いなと思っている職業があるので、それについて周りの大人の方々や先輩に聞いたり、実際にその職業に携わっている人をSNSで探して連絡するなど、いろんな人から積極的に話を聞いているところです。
卒業までの間は、とにかくその時やりたいと思ったことを思いっきりやって過ごしたいですね。

―これから入学を考えている人に向けてメッセージをお願いします。

これから大学に入学する人に対しては、何にでもチャレンジしてみてほしいと思います。人それぞれ好き嫌いはあると思うけど、「やってみてもいいかな」とちょっとでも思うのであれば、一度チャレンジした方が良い。
昔先輩に、「挑戦するだけならタダ。逆に挑戦しないのはチャンスを捨てているだけ」と言われたことがあって、本当にその通りだと思うんです。まだ学生だし、やってみて、たとえ失敗したとしても損にはならないはずです。

―ありがとうございました。

新型コロナウイルスの影響で思うような学生生活が送れなかった2020年上半期を、積極的な取り組みでみごとに得難い経験に変えた岡田さん。「何事もまずやってみる」、そんな岡田さんならではのエピソードを聞くことができ、目標に向けてひた走るパワーをもらいました。

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