今年から新しい形へ ー7回目を迎えた学生同士の日韓交流ー

ゼミ活動

経済学部 武田ゼミ2年の杉山です。

経済学部のゼミと連動したグローバル教育「グローカル・フィールド・スタディーズ(GFS)」。武田ゼミでは3年生のプレゼン大会と並び2年生でのGFSが、大きなイベントとなっています。2022年9月3日(土)、武田ゼミ2年生と韓国の釜山教育大学の学生とでGFSによる国際交流を行いました。韓国の学生との交流の様子と交流会で得た学びを紹介します。

※釜山教育大学と武田ゼミとのご縁については過去の記事より紹介します。

釜山教育大学は、お隣の国、韓国の釜山広域市にある大学で、1955年に創立された国立大学です。小学校教員を養成する大学で、東京でいえば、東京学芸大学をイメージしていただけると良いかと思います。

釜山教育大学の地図

釜山教育大学と武田ゼミとの交流は、釜山教育大学の金龍民先生が中央大学経済学部のご出身というご縁からです。金先生が2015年に来日された際に、東京駅の駅ビルで、金先生と武田先生がお昼にとんかつを食べながら「学生交流をしましょう」と話したことから始まりました。

引用元:コロナ禍の国際交流―経済学部 武田ゼミからの報告

これまでの形、これからの形

例年の韓国へのGFSは、3月1日に釜山教育大学で対面の交流会を行っていました。その日は日韓の歴史のなかでは忘れてはいけない 「3・1独立運動」の日であり、例えば、2019年の交流会はそれがちょうど100周年を迎える日でした。そうしたタイミングに実際に韓国に行くことによって、表面的な知識ではなく、生涯忘れられない深い学びに繋がると思います。

その日が韓国では祝日であるということも、交流会開催日にしてきた理由と聞いていますが、しかしながら韓国では新学期が始まる3月1日前後は 多忙を極めることと、日本のようなゼミの仕組みをもたないので、以前から、交流会の継続性に課題があったということでした。

そこで今年からは、金先生ご担当の講義の一環に組み込んでいただき、夏と冬の2回、交流会が開催される形になりました。
当初の予定では、9月に武田ゼミの学生が韓国に行って対面で、12月にはオンラインで、という形でしたが、今年は9月にオンラインで実施し、12月には釜山教育大学の学生が中央大学を訪れて対面での交流会を実施することとしました。

先輩に学んだ「伝わる」プレゼン

交流会では、日本の紹介を文化・学校・経済の3つのテーマに分け、各班20分間、英語によるプレゼンテーションをします。発表後、韓国の学生から質問を受け、意見交換をするのが慣例です。

例年の2年生は3月の交流会に向けて10月頃から準備をはじめていましたが、今年は9月開催と早まったので、私たちは4月に武田ゼミに入ってすぐ、発表準備にとりかかりました。普段のゼミの授業時間とは別に班ごとに作業を進めます。

本番までに武田先生と先輩の前で2回、中間報告会を行いました。先輩方からは、もう一度中身を考え直す必要があるような、思わず唸るアドバイスが多くありました。それらを踏まえて修正したものを再度見てもらい、8月中旬には本番を迎えるだけというところまで出来上がったつもりでした。

お盆明けには2泊3日で武田ゼミの夏合宿。合宿のメインは、初日と最終日に行われる、3年生のプレゼン大会に向けた中間報告会です。2年生と4年生(や先生)が質問やアドバイスをするというものですが、3年生の先輩方の発表は、途中経過のスライドだったにも関わらず、自分たち2年生のものよりもはるかにシンプルで、内容がよく伝わるものでした。また4年生の先輩方のアドバイスは、広い視野から的確なポイントをついたものでした。

初日の報告会が終わって戻った部屋では、先輩方のレベルの高い発表と比べると、自分たちの発表はこのままではまずいのかもしれないという話でもちきりとなり、私たちは自分たちのスライドを見直したくなりました。

夏合宿を終えてから本番までの1週間、私たちは班会議を詰め込み、ほぼ完成していたスライドを見直し、合宿で学んだことを最大限スライドに活かせるようにしました。
その結果、自分たちのプレゼンのクオリティが高まったと感じています。たった20分間の発表に、たっぷりと時間をかけてクオリティを追求できるのも学生ならではの経験だと思います。

3年ぶりの対面実施に向け渡韓手続きに奮闘するも・・・

コロナ禍の事務手続きに苦戦し、オンライン実施への切り替えに至るまでには、紆余曲折がありました。

今年の交流会は2022年9月3日(土)に開催されることとなり、当初は韓国の釜山教育大学での対面開催の予定でした。武田ゼミでは発表準備に加え、航空券や宿泊先の予約も2年生が主体となって準備しています。しかし、今年はコロナ禍の渡韓ということもあり、通常の渡韓手続きに加えて普段とは異なった手続きをしなければなりませんでした。

まず、大学の許可を得る必要がありました。「感染症危険レベルが1であること」が条件のひとつでしたが、私たちが事務手続きの準備をはじめた6月頃は感染症危険レベル2でした。レベル1に引き下がることを願いつつ、密かに準備を進めていました。

また、保護者の許可を得る必要がありました。航空券だけで10万円、それに加えてホテル代やビザの申請料、PCR検査費用など、かなりの費用がかかります。渡韓した先でコロナ陽性になった場合のリスクもあったため、何人かのゼミ生は渡韓を断念せざるを得ませんでした。

そんな中、感染症危険レベルがレベル2からレベル1に引き下げられ、いよいよ準備が本格的に。航空券の購入とホテルの手続きまでは順調に進みましたが、ビザを申請するための予約は申込日が決まっており、8月4日のビザ申請予約では全員分の予約枠の確保ができませんでした。本番1か月を切った段階で残念ながら渡韓を断念し、オンライン開催に切り替えざるを得なくなりました。

交流会で学んだこと

これから交流会で学んだことを以下の3点書いていきたいと思います。1点目は、伝わる英語とは何かを考えたこと、2点目は、「当たり前を疑うこと」の難しさ、3点目は、あるべき姿の設定についてです。

1.伝わる英語とは何かを考えた

交流会当日は、発表の前に、1時間ほどアイスブレイクの時間がありました。まずはオンライン上で、いくつかのグループに分かれてお互いの自己紹介。初対面の韓国の学生に英語で話すことは難しく、伝えたいことが英語にならないもどかしさもありましたが、スポーツや漫画など共通の話題を見つけ、お互いの趣味や日本に来たら何をしたいかなどの質問をすることで少しずつ打ち解けていきました。

その後、全体でレクリエーションを行いました。自己紹介の情報を司会が集めて、そこから誰を指しているのか当てるクイズ"Who is this?"ゲームや、究極の2択クイズが行われ、とても和やかな雰囲気になっていきました。

そしていよいよ武田ゼミ生から、文化・学校・経済の3つのテーマで日本を紹介するプレゼンテーションを英語で行い、質疑応答を行いました。

単語の意味や使い方をきちんと知っていないと、自分たちが考えていた意味とは異なるものになってしまうので、プレゼンテーションの準備段階で、難しい英語で表現することより、分かりやすい英語にすることを心がけていました。しかし実際にやってみるとイントネーションの問題で伝わらなかったり、考えていることがなかなか英語にならないこともありました。お互いが普段使う言語が異なるため、日本人同士で英語を話すときよりも正確な英語を丁寧に話すことが必要だと感じました。

それでも諦めず表現を工夫するなどで意思疎通ができたので、英語でのコミュニケーションについて自信がつきました。相手に伝えるために必要な英語表現を覚えたり、正確な発音を確認するなど、今後の課題も見えてきました。

2.「当たり前を疑うこと」の難しさ

普段のゼミの時間に「当たり前を疑うこと」を学んでいたため、交流会で応用するように心掛けました。準備段階から、「日本の当たり前」を前提としていないか常に考えるようにしていました。

例えば、これは文化班の6月の中間報告会で使用されたスライドと9月の発表当日のスライドです。

中間報告会のスライド(左)では競技用の畳の画像になっています。しかし「畳」に馴染みのない韓国の学生にプレゼンをするため、発表当日のスライドは一般的な敷物として利用されるような畳の画像 (右) に変更されています。

日本人同士ならば、共通認識により説明の必要がない部分も、韓国の学生相手ではもちろん通用しません。そのことを考慮して韓国の学生に伝わるように話そうと試みました。しかし振り返ってみると伝わっていなかったなぁと思った部分も多く、共通認識が存在しない相手との交流は思っていた以上に難しいものでした。

だからこそ、簡単な英語を正しく的確に使える力・伝わるように表現を工夫する力が必要だと身をもって感じることができました。韓国の学生との交流会では言語・文化の違いがある相手だからこその経験・学びがありました。

なお私たちは発表のスライドを改善したつもりでしたが、交流会後に「これで本当に韓国の学生がイメージできますか?」と武田先生から指摘されてしまいました。「だったら事前にツッコんで!」と思いました(笑)

3.「あるべき姿」の設定

「あるべき姿」を明確にすることによって、プレゼンテーションで伝えたいことが伝わりやすくなるということを学びました。

経済班では、未婚化・晩婚化の問題をとりあげました。しかし第一回目の中間報告会時点では、勉強してきたことをそのままプレゼン資料に詰め込んでいたため、「あるべき姿」が埋もれてしまっていたのです。
先輩方から「何を伝えたいのかがわからないので、この発表で何が言いたいのか自分たちの意見をひとつ持てるように話し合ってみて」と、武田先生からも「30秒で班員全員が内容を伝えられるように」というアドバイスを受けました。そこで私たちは、未婚化・晩婚化の解決策のひとつとして、学生を対象とした提案に絞り、「あるべき姿」を「Matching the good partner」に設定しました。

先に述べた夏合宿での先輩方の発表は、初めて見た私たちでもわかるようなシンプルなものでした。あるべき姿が明確になっていて、それに対する問題点や現状もクリアに示されていました。余分な情報が削ぎ落されていて、発表で何を伝えたいのかがはっきりと伝わってきました。

誰に向けての提案なのか、「あるべき姿」に対して現状とのギャップはどれくらいなのか、それにより生じている問題は何か。「あるべき姿」を明確にすることによって現状・問題点をはっきりと示せるようになり、発表がシンプルに伝わりやすくなるということを学びました。

今年からさらに発展した形で…日韓学生が交流することの意味

今までは武田ゼミの学生が釜山教育大学に行き、年1回の交流会を行っていましたが、今年から夏と冬の2回開催という新しい形になりました。

釜山教育大学の学生は、小学校の教員を目指している学生で、将来教育を担うような方々です。そういう学生と日本人の学生がこうした草の根交流をすることで、日本人学生のリアルな姿を認識してもらうことが大切であり、そこにこの交流の意味があると感じています。

今年から新しい形になることで、より一層親密な関係を築いていけると確信しています。12月、釜山教育大学の学生が無事に日本に来ることができ、実際に会って交流できることを願っています。 (武田ゼミ2年 杉山)

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