地元野菜でレシピ開発!地産地消の流れとコミュニティを育てたい

ゼミ活動

丸山ゼミ3年は、日本の農業振興について研究しています。2022年度の「おつまみ班」は岩手県遠野市のわさび農家にフォーカスを当て、わさびと地元の野菜を使用したレシピを開発、市内の複数の飲食店で扱ってもらうという成果を挙げました。

コロナ禍でわさびの価格が大幅下落

わさび生産量が全国3位の岩手県。その大部分は林間で栽培される畑わさびですが、盛岡市の南に位置する遠野市では、達曽部(たっそべ)川のきれいな湧水を利用した水わさびの生産が盛んです。

遠野市の風景(ゼミ生撮影)

しかしながら高齢化と後継者不足という日本の農業の課題についてはここも例外ではなく、年々就業者数・農家数ともに減っていっています。追い打ちをかけたのがコロナ禍で、主要な取引先である都心の飲食店が時短営業や営業停止となった結果、わさびの需要が一気に減少してしまいました。

研究の一端として農林水産省の調査結果をはじめとするさまざまなデータに目を通していたゼミ生は、コロナ禍でわさびの市場価格が半分程度まで落ち込んだことに衝撃を受け、わさび農家にフォーカスを当てることにしました。

既存農家も新たな取組みを意識している

目指すところはわさびの需要増だけでなく、生産農家を増やすこと。若者を中心に新規就農者を増やし、定着させる働きかけが必要です。まずは生産地の遠野市内で、新たな流通経路を確保するとともに、わさび農家に対して興味を持ってもらおうと考え、わさびを使った飲食物の開発をする「おつまみ班」を立ち上げました。

当初は「ホットドッグをわさびマヨで食べる」などのアイデアもありましたが、市内の飲食店は居酒屋が多く、そこで扱ってもらうために「おつまみ」という方向に。
雪も融け、迎えた5月の連休。おつまみ班のメンバーは岩手県遠野市を初訪問。農家や飲食店などあいさつ回りをして、さまざまな人と関係を作っていきます。

研究の一環として地元の農家の方々に行ったヒアリングでは、JA出荷に適さない“規格外品”を用いた6次産業化への興味や、他の産業を巻き込んだ新たなコミュニティを切望する声を聞くことができました。

マイルストーンとなる、レシピの開発

「規格外品を含む作物の取引の増加による、農家の売上げ向上」を長期目標にしたおつまみ班メンバーは、短期目標を「農家と飲食店の新たなコミュニティの創出」に設定し、その繋がりを作る核となるレシピを、地元のわさびと野菜などを使って開発していきました。

遠野市で飲食店を営む料理人の有賀さんとは丸山ゼミの先輩の代からのお付き合いとなっており、レシピ開発のアドバイス等をお願いすることになりました。テレビ会議を重ねながら9月にレシピが完成、「食べる遠野」と名付けました。
たっそべ漬け(わさびの葉と茎の醬油漬け)と地元産の長芋・長ネギを使った塩麻婆味の冷たいおつまみで、お通しやスピードメニューとして活用できます。試食と、その都度アンケート回収を行って改良し、280円で販売した場合に原価率23.3%、215円の粗利が見こめるという参考価格も設定するなど原価計算も綿密に行いました。結果、10月には市内3店舗で常設メニューへの採用が、1店舗で不定期・限定メニューとしての採用が決まりました。(採用いただいた飲食店様:「遠野醸造」様、「来い来い」様、「Deん」様、「鳥てつ」様)

また葵食品様の葉わさびを使用した商品を独自に開発し、遠野醸造様で扱っていただくという方向も決まったほか、有賀さんの計らいで遠野市の道の駅 「風の丘」にて商品化していただくことになりました。

地元へ根付かせるため、引継ぎを意識

ゼミ活動は授業の一環という性格上、その活動が単年で終わってしまうことが多くありますが、丸山ゼミ生はこうした取組みが来年以降も継続するよう、現地の方々への引継ぎを考えて細かなステップを計画していました。今年は短期目標までをやり遂げ、来年6月には遠野市の飲食店と農家の皆さまの交流会を開催予定しています。

自分たちの手を離れても、そこで生まれたコミュニティから地産地消の流れが育っていくこと、わさび農家をはじめ地元の農業に新しい風が吹き込むことを願いながら、丸山ゼミおつまみ班はもうしばらくの間、アンケートの実施や商品の販売実績の分析などに取り組んでいくということです。

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